CUE!というコンテンツに私が感じていたことのまとめ

皆様ご存じの通り、CUE!が区切りを迎えました。ライブ感想のポストはこちら。

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私はアプリ公開半年後くらいから追いかけていました(ナナシス→飯塚さん→DIALOGUE+→CUE!の順番)。この機会に自分がCUE!というコンテンツ(アプリ、アニメ)に感じていたことと私的な分析をまとめておきます。

注:分析しちゃってるんでネガティブな内容も入っていますが、それを考える機会をくれたことも含めて個人の経験の中で最高のコンテンツ体験だったと思っております。

 

コンテンツを取り巻いていた環境
  • コンテンツ展開序盤(2020年春)で新型コロナが流行してしまい、想定していたボリュームの潜在的な顧客にリーチできなかったのが質・量共に影響が大きかったんだろうなぁ、という想像ですがどうなんでしょう。
  • 後述するように、類似他コンテンツの既存展開や、本作のビジュアルから連想しそうな内容と実像がずれていたのを感じました。それは意図的なずらしでありかつ魅力でもありました。私は本作にしばらくついていった先で「はーこういうことだったのかー!」と、シナリオや全体の意図がわかって徐々にはまっていく…という体験ができました。正直嬉しい驚きでしたね。序盤で関心を持つ人が増えていたら熱心なファンが増えるなど、もうちょい違う展開になっていたのかもな…と妄想してしまいます。
    • あの絵柄で「カレイドスコープ」のガチ展開&楽曲が来るとは思ってませんでしたよ…私だけでしょうか…
アプリ/コンテンツの売り
  • アプリのゲーム性:カードの組み合わせを見つければ他にあまりやることがなく、ゲーム性ややり込み要素は弱め。「何かが上手になった」という体験には乏しかった。私は隙間時間で放置できるのがありがたかったんですが、楽しい遊びが提供されていたかと言うと、うーん。
  • アプリでユーザーをコンテンツの何と接触させたかったのか?:アプリを遊んでいても楽曲に触れる機会が少なかったですね。
    • 音ゲーは曲を聴いてテンポに合わせて体の一部を動かすので、楽曲を理解しながらの接触が多いんですよね。少なくともテンポは覚えられる。
    • CUE!はアプリを触っていてもアプリ経由では曲の存在自体よくわからなかったです。公式Webやyoutubeを何回か回ってようやく楽曲とアプリの関連がわかるようになった感じ。
    • 本作のライブは1stから超絶ハイクオリティーでしたが、あのアプリからこのライブが生まれることは想像が難しかったです
  • 「声優の演技のバリエーション」はどの程度需要があったのか?制作コストに見合っていたのか?:アプリは音ゲーではなく、「声優の演技のバリエーション」を楽しむことが最大の特徴で、私もボチボチ楽しむことができました。新しい体験であったことには間違いないです。
    •  ただ、数分程度のショートアニメの演技で明確に違いがわかる場合って限られないですかね?少なくとも自分はそうでした(耳が悪いのかも…)。声や元のキャラに特徴があるメンバー(志穂、悠希、絢、鳴あたり)はほーなるほどーと思えるんですが、それ以外だと「声がちょっと違うなぁ…」という程度にしかわからなかったのも事実。
    • 「リアル声優が演じている声優キャラ」までは把握できても、「リアル声優が演じている声優キャラが演じているショートアニメのキャラ」まではなかなか把握できませんでしたね…
    • 通常声優は「一番得意な演技」に近いキャラを担当して視聴者もそれを見るわけですが、「そう得意では無いバリエーション」を聞けたのは興味深かったです。ただメインストリームな楽しみ方では無いという印象ですね。
    • デビューできて大型コンテンツに抜擢されるレベルであれば、一定の基礎的スキルは揃ってるものなんだなー、ということに感心してしまいました。そこから差をつける要素はなんだろう?といったところまで感じさせる…というのはちょっと穿ちすぎる解釈でしょうか。
    • RL.vol.5の感想でも似たようなことを書きました。

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    • あと、シナリオがわかっているショートアニメを何度も繰り返して見るのは正直しんどかったです。「同じ脚本を違う役者が演じる違いを楽しむ」って遊びは、楽しむ側の準備も大変だと思うんですよね。私の演劇・ドラマ・アニメの楽しみ方としては「知らない脚本の話の流れを楽しむ」が土台にあり、その解像度を上げるために演者の演技がある、というものです。
  • 音楽は繰り返しに耐えるよう発展してきた形式ですが、演技(特に声のみ)はそうなってはいない。でも演技を繰り返しユーザーに見せることを核として選択した(してしまった)、というのはアプリとしてのCUE!の弱点でした(すいません。断言してしまいます)。
    • アニメと楽曲の製作コストを知らないんですが、たぶん同じ時間ならアニメのほうがお値段高いですよね。お値段高くて繰り返しに耐えづらいのであれば…
キャラ造形/設定/脚本など
  • アプリのストーリーは質量共に十分以上。軽妙なもの、日常寄りのものから、本コンテンツのコアである「声優を職業とすること」に対する真剣なものまで、これを基本無料のアプリで読んでいいのだろうか…と思いながら読んでいました。多くはないですが課金しましたよ。
    • アプリ終了で読み返せなくなったのがとても残念&もったいなかったですね。リーディングライブ前後でどれだけ読み返したくなったことか。
  • 16人ものキャラを登場させた強みとして(人間は多面的なので実際はそうではないのですが)、物語のキャラクターとしてステレオタイプ的な位置づけによりわかりやすくできていました。ステレオタイプが受け入れられてからの変化は成長や意外性として物語を動かすことができます。
    • キャラをキャストに寄せてあったのも、虚実織り交ぜて展開するコンテンツとして面白い作り方でした。
    • 3x3=9のコンテンツがあったので、4x4でさらにバリエーションを出そうとしたのでしょうか?
    • 1/2/3/4番手、花鳥風月、春夏冬組など、組み合わせのバリエーションごとに楽曲の印象が違うのは素晴らしかったです。返す返すも、アプリで楽曲との接触がほぼなかったのはもったいなかった…
  • キャラの年齢層:マンガアニメは基本的に登場人物の年齢を低くするものですが、もうちょい年齢高くても良いのでは?と思ってしまうのは私がオッサンだからなのでしょう。みんなあの年齢でしっかりしすぎなくらいですよね。
  • 全員新人であることからのシナリオ上の制約:同じスタートラインに立たせる必要性から16人全員全くの新人声優として設定されましたが、そうすると年齢やキャリアの上下関係の物語が入らないんですよね。この制約は作劇上厳しかったように見えました。アニメでは流石に先輩声優たちが描かれましたが、それが無いアプリはシナリオの手詰まり感がちょっと見えてしまっていました。
  • 悪役不在の世界:私は物語であっても明確な悪意の描写が得意ではないので、悪役不在の本作品は好みと合ってました。ただ日常系では無く、プロの声優としての道のりの厳しさを描く、となると、結果が出ないのは本人の才能と努力が足りないか、運が悪いかというある意味救いのない結論になってしまいます。こっちのほうが現実に近いし、より辛い。明確な悪意(意地の悪い同業者など)に妨げられてる方が物語としては救いがあるんですよね。かわいい女の子たちの癒しライフ、みたいなのを想像しているのに現実からでっかいカウンターパンチを食らう展開は、自分は好みでしたが。
  • 彼女たちは十分以上に成功者なのでは?:アプリ内作品をあれだけ本当に担当できていたのであれば、声優としての仕事が少ない…といった描写と食い違いを感じていました。ミニアニメも「オーディションでの演技」にとどめておいて、いくつかの作品については実際担当できたのかをシナリオ内でぼかしてた方がそれ以外との描写とつながりが良かったように感じています。
    • アニメではこの辺りがやや解消されていました。
  • 見た目の造形/性的な要素が控えめ:肌の露出が少ないのは世界観にピッタリですし、自分の好みには合っていましたが、顧客のボリュームゾーンが想像していた範囲と合っていたかはよくわかりません。付随していわゆる百合的な描写が控えめなのもありがたかったですプレイヤーキャラであるマネージャーの性別もわからないようにしていたのもポイント高かったです。でもそれが主に男性向けコンテンツの商業的判断としてどうだったか、というのは別問題なんですよね。
    • 水着が出たときは「テコ入れか!」とマジでビビった(笑
  • プロの卵としての生活の延長線上にある日常の描写/声優として生きていく決断とそれに付随する苦悩、は広く顧客に届くテーマだったのか?:本作は広く捉えると職業モノでしたが、あの造形のキャラデザでリアルでは新人声優が歌って踊るコンテンツが職業モノとして受け入れられる状況だったろうか?というのがよくわかっていません。
アニメとアプリの関係
  • 「新人声優の悩みや葛藤」というかなりニッチな題材で、しかも16人も同期の声優キャラを出してしまうという前提がありつつ、さらにアプリとアニメで異なる世界線を引かざるを得ないのはつらいなぁ、と思いながらアニメを見ていました。
    • アプリが止まっているとはいえ、アプリのままのストーリーを再構成しては古参ファンには退屈だからなぁ。
  • アニメの各話感想で書いたか覚えてないので重複するかもしれませんが、アフレコ収録スタジオ内で展開する物語は画面としてどうしても地味になってしまいました。そこでキャラにも映像で演技してほしいところでしたが、キャラデザおよび作画はそっちの方向を選べていませんでした。その分キャストの演技の比重が大きかったといえるかもしれませんが。
キャスト/楽曲/ライブ/多メディア展開
  • ライブ演出は声優アイドルライブではなく演劇の文法でしたが、それはキャラクタービジュアルや声優ユニットという周辺情報からは伝わりにくかったんじゃないのかな?と想像してます。1st Partyの配信でキャスト名を最後まで言わず、徹頭徹尾キャラクターとして演技と歌唱してくれたのを見て「おぉーーこのコンテンツいいぞーー」となった自分としては、ライブ配信まで追いかけて映像を見て初めてそこに気づけたわけで、やっぱり初動で知ってもらう機会を失ってしまったのはもったいなかったなぁ。
  • ライブでの16人のフォーメーションはこれマジで?!という超絶ハイクオリティを1stライブから見せつけていました。が、これも見ないと実感できないんですよねぇ…
  • 楽曲は歌詞・曲ともに整った品の良さが心地よいものばかりでした。激しさ、かわいらしさ、切なさなどすべてが「上品」で、なおかつキャストの皆さんもその作品観を逸脱しない程度に楽しく明るくプロ声優として活動してくれていたので安心して作品を楽しむことができました。
    • 衣装もぜーんぶよかったんだよなぁ。PV内も含めて。
    • 「才能があり努力家でもある育ちのよさそうな若者を応援する」って言ってしまうとちょっと変な感じですが、そんな感じの方面でも最高クラスのチームだったと思います。
  • 超CUE&A!はたまにしか見てませんでした。すいません!自分の生活リズム上放送時間帯を空けにくく、4時間以上/週と量も多かったため、予定が空けられたりゲスト会だったりを断片的に見ていただけです。それでもキャストのうち4人の人となりが分かったのはうれしかったですね。
    • 筆者はログっ子なので、花鳥の8人は結構見ていて、あとひまなっつもできるだけ見ていて…となると残り数人くらいですかね。
  • YouTubeのCUE! Roomはもうちょっと回数増やしてほしかったかなぁ。アプリの調子が良くなかったからしょうがないか…
    • アプリ止まってからアニメまで、莉子の酷使でつながざるを得なかったのはマネージャーとして見ていて本当につらかった…
まとめ

ごちゃごちゃ書いてきましたが、アプリ・アニメ・イベントを通して「お色気百合恋愛悪役ほぼ無し、歌うこともあるけどアイドルでは無い。日常系に見せかけつつも、若者が自分の才能を頼みに苛烈で困難な道に愚直に挑戦するとても上品なコンテンツ」の魅力が広く伝わり、パシフィコを埋める(失礼ながら3階を使うとは思っていなかった)までになっていたということは事実なんですよね。3年を長いと思うか短いと思うか、もっと続いてほしかったと思うかどうかはいろいろ見解あると思いますが、キャラもキャストもきちんと成長を見せてくれて、それを明確な区切りで披露してくれたことは僥倖としか言いようが無いでしょう。ライブ前後でいろいろ考えたり書いたりしてきて、このタイミングでの明確な区切りを決断してくれた皆様、そのライブをこの上なく素晴らしくしてくれた関係者の皆様に厚く御礼申し上げたいです。

 

楽曲編、キャスト編を書きたい欲求はありますが時間と熱量との相談です。アーカイブ見たいし!

余談の想像
  • これは完全に想像なんですが、野島プロデューサーが関わっていた「少女歌劇レヴュースタァライト」でも「役者として生きていくことの決断」「役者という職業の苛烈さ」みたいなテーマがありましたよね?何か影響関係あるんでしょうか。(というのは古参であれば周知の事実なのかもしれませんが…)
    • あちらは劇場版のみ体験済みです。劇場版に野島さんが関与されているかは存じ上げません。

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